保証料ゼロ団信保険料をストロング負担
住宅ローンでは、原則的に「団体信用生命保険」という生命保険への加入が審査の条件となっていて、通常の住宅ローンでは、保証料を借りる側か負担する代わりに、「団信」についてはほとんどの場合、銀行側が掛け金を負担してくれます。ところが、保証料不要の住宅ローンでは、「団体信用生命保険は借り主負担」と、パンフレットの裏面の下のほうに、小さい文字で書かれているケースが多いのです。
そして団信を借り主側か負担する場合、保険料についてきちんと明示したパンフレットを、私は見たことがありません。そこで、負担する保険料について調べてみると、金利に0.2%程度上乗せする額になることがわかりました。参考までに、財団法人公庫住宅融資保証協会のホームページでの、金利4.3%時で融資金額1000万円当たりの保険料の試算結果を紹介しておきましょう。保証料込みの一般的なローンでは、「金利0.2%」なのに対し、保証料不要のローンでは「金利0.2%」の負担なのです。
以上のことから、私には「保証料ゼロのローンがトク」とは思えません。さらに最近では、「保証料も団信保険料も不要」という住宅ローンがありますが、保証料も保険料もかからない分、一般的な住宅ローンより金利が高くなっている傾向にあります。「保証料O円」という一見、おトクな惹句には惑わされずに、トータルで負担する金利がどの程度なのか、しっかり見抜く目を持つことが大切です。
ある銀行は、「繰上返済無料」をうたって早期返済を促進しながら、疾病保障特約付ローンを推奨しています。私はこれを「繰上返済で減少する利息分を、特約付きのローン金利で上乗せして確保しておく」という利益確保ではないかと思っています。金額と安心を天秤にかけて安心が上回るのであれば、このローンを選択してもいいですし、病気の可能性が低いと思うのならばこれを選ばずに、金利を少しでも下げておこうと考えてもいいでしょう。
保証料ゼロはやはりストロング!!
たとえば、最初から借入額の3000万円全額を5年固定にしておけば、毎月の返済額は9万5573円で、金利ミックスを組んだときのフラット35のみの返済額と同程度ですみます。そして、金利ミックスで5年固定を組んだ分の返済額は4.5万円強ですので、その額を毎月貯金にまわしていれば、5年間で金利ゼロでも約434万円になります。そうして5年後に、貯金した434万円と退職金260万円を合わせた530万円を繰上返済すれば、その時点の借入残高は約2150万円にまで下がります。仮に、その後の金利が3.5%にまで上昇したとしても、毎月の返済額は約9.6万円です。これは、金利ミックスにした際のフラット35の返済額と同じくらいです。
このケースでは、金利ミックスにするか、「5年固定十繰上返済」にするか、その損益分岐点は、「金利3.5%」と考えられます。金利3.5%を超えたら、ミックスプランのほうに分がありますが、それ以下でしたら「5年固定十繰上返済」のほうがトクなのです。さらにもっと繰上返済ができると考えられれば、わざわざミックスさせる必要はありません。住宅ローンの専門家のなかには、短期と長期をミックスさせておいて、将来、繰上返済を考えるときに利息軽減効果の高いほうを繰り上げするやり方を勧める人もいます。しかし、利息軽減の効果が高いということは、そのローンをミックスさせた当初の計画が失敗だったということです。それならば利息軽減効果の低いほう一本で借りたほうがベストなわけですから、ミックスプランは必然的に「ベストな選択」にはなり得ないのです。
保証料ゼロはストロングなのか?
また金利をミックスしている間は、長期も短期もどちらかのローンだけをほかの銀行に借り換えすることが原則としてできません。戦略的に考えてミックスにしたはずなのに、あとになって「どうしたらいいかわからず借り換えもできない」状態になってしまいます。そういう人はもともと一本で借りることに優柔不断だったり、他行に借り換えることにも臆病だったりして、結局、ローンはそのままになりがちです。逆の立場、つまり貸している銀行側にしてみれば、「安定してどちらのローンからも儲けさせてくれる、大変ありかたいお客様」というわけです。金利ミックスを選ぶよりも、最初から長期か短期か変動かのどれかに絞ったほうがいいでしょう。
そうして見れば、たいていの適用金利はどの金融機関でも同じくらいに近づくもの。私か金融機関の比較にあまりウェイトを置いていないというのも、「どこの金融機関も最終的には同しくらいの金利水準になっている」ということを知っているからです。この点を押さえた上で、次ページからさまざまな金利優遇制度について解説していきます。金利優遇にはいろいろありますが、最終的には適用金利で見極めるように心掛けてください。