シックハウス症候群の被害
ここ十数年来、住まいにまつわる健康問題への関心が高まってきて、「健康住宅」という言葉が流行っています。でも本来、住宅は人が安全で健康的な生活を続けるための空間だから、わざわざ「健康」という言葉を怯っ必要はないはずです。これに類するものに、健康食品、健康家具、健康寝具、健康サンダルなど、世の中には不思議と「健康」を冠した商品が目立ちます。これもひとえに、大量生産時代に企業が健康を害する商品を数多く生み出し、健康被害が続出したからでしょう。
住宅による健康被害の代表的なものは「シックハウス症候群」です。テレビや新聞・雑誌、またインターネットなどでよく目にしたり聞いたりする言葉だと思いますが、これがどんなものか簡単に説明しておきましょう。ビニールクロスなどの壁紙に含まれている可塑剤と、その壁紙を壁に貼り付けるために使われるボンドなどの接着剤や、フローリング材の合板に使われているホルマリン系接着剤や塗料、さらには畳に含まれている防虫剤など、住宅の内部を構成するものにはじつに多くの有害な化学物質が使用されています。これらによる影響が人体におよんで、人によっては激しく症状があらわれます。これが「シックハウス症候群」と呼ばれるものです。
その症状は、目がチカチカして痛くなる、のどや鼻の中が痛くなるといった比較的軽微なものから、ひどくなると頭痛、ぜんそく、アトピー、さらには死にいたる場合さえあるといいます。症状が出やすいのは、家の中にいる時間の長い主婦や高齢者、そして子供たちです。別名「新築病」といわれるように、主に新築の住宅やマンションに生活しはじめて1~2年の人に症状が出ることが多いのですが、一方で何年を生活してはじめて症状が出る人もいるため原因の特定が難しいとされてきました。しかし最近は、多くの研究者や研究機関によってかなり原因物質の特定がされてきており、場合によって因果関係の立証ができるところまできています。
有害物質にはどんなものがあるのか?
シックハウス症候群の原因となるのは、建材などから放散する有害物質による居住環境の汚染です。汚染の原因物質はホルムアルデヒドのような有害なVOC、各種の硫黄・窒素酸化物、ダイオキシンに代表される塩素化合物などです。
VOCとは揮発性有機化合物のことで、ホルムアルデヒドのような有害なものもあれば、フィトンチッドや香りの成分などの人を快適な気分にさせるものもあります。ここでは有害なものを悪玉VOCと呼びます。居住環境と関係がある悪玉VOCには、次のように建材に含まれるものと、施工に使用されるものがあります。ホルムアルデヒドは合板、木質ボード、複合フローリングの製造に使用する接着剤、塩化ビニールクロス施工用の接着剤に含まれますが、このほかにこれらの合板や木質ボードを使った家具類からも放散されることが多いのです。現在では規制もあって、非ホルムアルデヒド系の接着剤を使用した製品が出ているので、このようなものを選ぶようにしましょう。
塗料や現場施工の接着剤などのシンナーとして使われているトルエン、キシレンなどの有機溶剤は、施工直後の塗料や接着剤が十分に硬化していないときに放散しやすいので、それを避けるために施工後は十分に硬化するまで通風をよくして放置しておく必要があります。木材の防腐・防蟻剤、土壌処理剤に含まれる有機リン系やピレスロイド系の殺虫剤は、床下などの見えないところで放散します。対策としては、床下などの換気をよくするほか、このような処理が必要な部材には耐久・耐蟻性の高い樹種を選びましょう。また、腐朽菌やシロアリが発生するような条件をつくらないように設計することも大切です。塗装木材の塗膜、プラスチック加工した壁紙や表面材料として使われている合成樹脂には、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる成分を含む可塑剤を使っているものもあります。これを避けるためには、材料に含まれる成分について注意を払い、疑わしいものはなるべく使わないようにすることです。これらの物質は種類が多いだけでなく、排除・除去することは非常に困難です。そのうえ、「化学物質過敏症」の人のように敏感に影響を受けて発症する大がいる一方で、ほとんど影響があらわれない人もいて、人体への影響についても個人差が大きいため、悪玉vocの許容できる濃度限界もはっきりとはしていません。
さらに実際に居住している空間では、換気・通風の状況によって濃度が変わりやすいので、厳密に規制することも難しいのです。使用する材料や施工法を改良して、これらの物質が放散するような状況は避ける必要がありますが、住居内で使用が避けられない場合には、換気を十分にすることによってその影響を少なくするように心がけましょう。法律やガイドラインの整備によって、住宅において有害な化学物質の使用が制限されるようになってきましたが、シックハウスが日本から消えるまでにはしばらく時間がかかるでしょう。なぜなら、現段階では法律やガイドライン自体がまだ不充分だからです。ですから、あなたはしっかりと事前学習を行ない、厳しい目をもって、住宅会社がどんな材料を使いどんな家のつくケ方をするか監視することが必要です。みんながこんな姿勢でパートナーを選ぶようになっていけば、競争原理が働いて本物の健康な住宅を提供するような会社が増えていくはずです。
工業化製品を多用した住宅が、現在の住宅寿命を短くした一番の原因なのです。また、アトピーやアレルギーなどのシックハウス症候群を誘発しているのです。一般的に、35年もの住宅ローンを組んで住宅を建てる方が多いなかで、住宅寿命はそれよりも短いのが現実です。そして、長く持たせようとするには、莫大な保守メンテナンス費が必要なのです。しかし工業化製品を多用した住宅の問題は、それだけではありません。住宅に使われている工業化製品は、さまざまな病気を引き起こす原因であるとも考えられています。工業化製品に使用される接着剤が、私たちの体に悪影響を与えるのです。アトピー性皮膚炎、シックハウス症候群、ぜんそく。これらの病気は、ぜんそくを除いて、ここ十数年前から頻繁に耳にするようになりました。これらの多くは、化学物質を多用した家に原因があると言われています。すなわち工業化住宅が原因なのです。
数年前の新築住宅と化学物質の関連について大きな注目が集まりました。新築住宅をローンで購人したところ、新築住宅から発せられる化学物質に過敏に反応し、完全防備での生活を余儀なくされているという内容です。生活ギリギリの住宅ローンを組んだため、引っ越しをしたくてもできません。これらはシックハウス症候群と呼ばれました。このように、現在建てられている日本の多くの住宅は、住宅自体の寿命ばかりでなく、人間の寿命までも奪いかねない危険な住宅なのです。シックハウス症候群、アトピー性皮膚炎などは、家に関する知識や興味がない方でも耳にしたことがある病名だと思います。これらは私かこの業界に入って、十数年したころから頻繁に耳にするようになりました。起こるべくして起きた、「公害」と言っても過言ではないでしょう。家に帰ると頭が痛い、目から涙が止まらない、喉が痛い、肌がただれるといった症状を引き起こす病気です。これは近年、住宅が高気密になり、建材や内装材から放出される化学物質が室内に閉じ込められることが原因だと考えられています。ホルムアルデヒド、パラジクロロベンゼン、トルエンなどといった有害な物質が、壁紙に使われる接着剤や、防腐剤、防カビ材などに含まれています。現在では有害物質を規制する法律ができ、ホルムアルデヒドの含有量が少ない接着剤が使われています。
大人は大丈夫でも子供にとっては厳しい!!
10数年前は人体に悪影響が出ている住宅が少なくなったわけではありません。今ではかなり改善されました。しかし、健康な人にとってはそれでよいのでしょうが、体の弱い人、小さな子供にとっては、それではふじゅぶんなのです。なぜそのような住宅は、今も造り続けられているのでしょうか。根本的な問題は、その新しくできた法律にあります。この法律は、人体への悪影響があり、問題視されている有害物質の一部しか規制していません。有害物質はホルムアルデヒドをはじめ、13種類もあるのですが、このうちだったの2種類しか規制されていないのです。だから人体に悪影響を及ぼす工業化製品の建築材が、今もなお使われているのです。
このような症状を防ぐためには、化学物質の使用を極力控えた家造りをすることが一番です。建築に使う木材には、どうしても防腐処理を施すので、絶対に化学物質を使用しないわけにはいきませんが、有害な揮発性化学物質を発生する接着剤またはそれらで加工された資材の使用を避けて天然植物油を主成分として自然素材の塗料や資材の使用を考慮して、家を建てる前に自分なりに研究し、的確に判断することが大切だと思います。もし、今自分が住んでいる家が工業化製品を多用した家だとしたら、どういった対策をとるのが良いのでしょうか。一番簡単で効率的な方法は、こまめに換気をすることです。室内の接着剤や壁紙から放たれた化学物質は、気密性の高い室内にたまって濃度を上げて、人体にさまざまな悪影響を及ぼします。こまめな換気を行い、濃度を下げることが何よりの対策です。シックハウス症候群やアトピーなどの予防は、家を建てる前ならいくらでもありますが、建てたあとでは、大がかりなリフォーム以外では、こまめな換気をすることしか効果的な対策はないかもしれません。
シックハウス症候群の原因は・・・
古来からの日本家屋は、通風性が良いですが、悪く言えば隙間だらけの家だったです。隙間だらけの家は、やはり冬は寒いですし、音も漏れやすくプライペートも損なわれます。しかし、工業化製品を用いることにより、隙問だらけの家の問題は解消されました。また、工場での大量生産により、職人不足による家の価格の高騰も、抑えることができたのです。政府も、悪い住宅を作ろうとしたわけではないのです。ただ、目的が偏りすぎていたのです。法律はいつも目先の問題の解消ばかりを意識してきたように思います。例えば隙間があり寒いから、高気密や高断熱になるように、床下から壁、天井までもビニールで覆う工法を使うのです。そうすると気密が高くなり空気が通らないから、強制換気の法律を立ち上げる、というように、目先の問題点を解消することだけに、とらわれてしまっているのです。
新しい法律ができるときは、必ずと言っていいほど、問題が発生し世論が騒ぎ出してから考える傾向があります。さらに建築の新しい法律を作る場合で言えば、政治家・官僚は大手ハウスメーカーの意見を取り入れる傾向があるのです。法律を作成する委員会のメンバーや代表に、民間の大手企業の役員が選ばれることもあります。そうなれば、メンバーの会社に有利な意見が出るのは当然。これがいつまでたっても変われない、我が国の現実ではないでしょうか。
大手ハウスメーカーの都合で作られる法律!!
立法に関して、官僚の天下り先の大手メーカーと政治家と国が、一体となって動いているという顕著な例があります。10数年ほど前から、シックハウス症候群の問題がマスコミで取り上げられるようになりました。世論があまりにも騒ぎ立てるので、国も重い腰を上げて、住宅の内装材の制限をする法律を作成したのです。そうやってできたのが、人体に悪影響を与えるホルムアルデヒド成分を、内装材から制限するという法律です。その法律を作成した委員会の委員長は、大手建材メーカーの社長でした。そのメーカーは業界でいち早く、商品のすべてを『揮発性化学物質(VOC)の新放出基準に適合している』といううたい文句でビジネスを開始し、立法されたときには、それはもう大変な利益を上げたのです。当然、大手メーカーは政治的なつながりから、そうした役職の話がくると思います。また、専門の技術者や素晴らしい研究室、実験室も確保していることから、国が頼らざるを得ないことも仕方がないと思います。しかし、この法律が施行されたにもかかわらず、アトピー性皮膚炎やシックハウス症候群はあまり改善されていないのです。